区立体育館の側にあるファミレスまで歩きでやって来た俺達。

土曜の昼時の店内は騒がしく、同じ学校の制服の姿もちらほらとあった。

男女合わせて10数人の俺達は、店内奥のボックス席に案内された。

壁際に奏を座らせ、その隣に座る俺。

他の野郎共が、隙あらばと奏の隣を狙っているのがわかっている俺の作戦なのは言うまでもない。

只でさえ片手で不便な奏の世話をやこうと、躍起になっているその他大勢。

そうはさせるか。
奏の世話をやくのは俺一人で充分。

「佐野君?何食べる?」

……奏が食べたいです…

「…ハンバーグランチ」

「あはは。ホントにハンバーグ好きだね?」

「…うん。好き、奏は何にする?」

「私はね〜…」

言いながらメニューを捲る奏。

「私もハンバーグランチにする」

メニューを閉じて俺を見てニッコリ。

その笑顔が俺の心のツボを刺激して、それが脳に伝わり、自然と口元が緩んでしまう。

「ランチだけ?もっと沢山食べないの?」

「うん。練習前だから、あんま食べ過ぎるとかえってよくない、俺的には食べない方がいいんだけどね?」

俺は食べないで練習するつもりだったんだけど、そうも言ってられないし、そんな雰囲気でも無かったしな。

「そうなんだ?沢山動くから、沢山食べた方がいいのかと思ってた」

「俺は食べ過ぎると動きが鈍くなる、反応も悪くなる、あんまり空腹でもよくないけどね?その代わり終わったら大量に食べるよ…」

俺は自分でも知らない内に、頭の中がバスケに切り替わっている事に気付き、あんな夢を見てしまった後なのに、身体の奥がウズウズとしてしまっていた。

…やっぱりバスケが好きだ、俺。

バスケの神様には嫌われてしまったけど…

これから先どんな将来が待ってるかわからないけど、嫌われたからってこっちが好きでいる分は自由だよな?

だから教員免許も取ろうと思った。

高田先生みたいに、ガキ共にバスケの楽しさを教えてやるのも悪くない。

「みんな決まった〜?ドリンクバーの券あるやつは出して〜」

奏の向かい側に座る貴司が仕切る。

やたらと仕切りたがるコイツはポイントガードに向いてるな。