四時間目が終わると直ぐに奏が側にきた。

「佐野君?大丈夫?」

物凄く不安そうな顔を安心させる為に、ニッと笑って見せる俺。

「大丈夫大丈夫。悪夢見てたよ、拓ちゃんに耳と尻尾とヒゲが生えててさ?四つばいで追いかけて来るんだぜ?もう俺必死に逃げててさ、追い付かれて噛み付かれた所で目が覚めた、ははは」

「……ホントに?…凄いうなされてたよ?…ずっと膝に手、あててたし…痛むの?」

かなり不自然な言い訳だったのか、奏は信じていない様子。

「…いや、痛くないよ?」

「……ホントに?」

「ホントホント」

「茜〜?大丈夫か?」

貴司が俺の席に寄ってきた。

「うん。怖い夢見てただけ、てか、いつから寝てたんだろ?俺」

「一時間目からずっと寝てたぞ?お前」

……一時間目…
どんだけ寝てんだ俺は…

「奏は?いつ来たの?」

「私は三時間目から来たよ」

「何で起こさなかったの?」

「ぐっすり寝てるみたいだったから…起こすのも気の毒で…起こした方がよかった?」

…あ。昨夜眠れなかったって俺が言ったから…

「…ごめん。ノート録りそこねた」

「そんな事…気にしてないよ…」

「奥村さん、俺のノートでよかったらコピする?」

「え?いいの?」

「うん。掃除の間にでも職員室でコピしてきなよ?」

「ありがとう、宮地君、そうさせてもらうね?」

と、ニッコリと笑う奏。
貴司は照れたように頭を掻く。

最近の奏は以前よりよく笑う。
それはいい事なんだけど、その笑顔が俺以外の男に向けられるのはちょっと面白くない。

「いいって、奥村さんの役に立てて嬉しいよ、なんて、はは…あ。俺達、区立体育館でバスケの練習するんだよ、奥村さん練習は無理だろうけど、おいでよ、てかさ、練習前にみんなで飯食い行かね?な?茜?」

…貴司。
ノリが合コンだぞ?お前。

「1時からだろ?そんな時間あんのか?」

「大丈夫だって、夕方まで体育館使えるから、少し位遅れたって、ね?奥村さんも行こうよ?」

「私も行っていいの?」

「いいに決まってるじゃん、同じバスケチームだし、女子も一緒に練習するし、俺、他の奴等にも言ってくるよ」