「…ああぁっ!!」
−−ガタッ!
「佐野君っ?大丈夫っ?!」
左膝を強く押さえる。
その拍子に激しく机が傾いていた。
…………奏?…
奏は横にしゃがみこみ、俺の顔を覗き込んでいた。
「…凄い汗…具合悪いの?」
「佐野?…大丈夫か?」
前を見ると英語の教師が、心配したような表情で俺に聞いてきた。
心臓がドクドクと激しく脈打ち、軽く息があがってる。
………夢?…
……夢見てたのか?
……奏?…いつ来た?
今、何時間目?いつから寝てたんだ?俺?
頭の中が混乱してるな。
とりあえず落ち着こう。
「何でも無いです。居眠りしてました。すいません…」
「居眠り?具合悪いんじゃないか?顔色悪いぞ?保健室行くか?」
「いえ、大丈夫です」
「…そうか…奥村。席につけ、佐野?ホントに大丈夫だな?」
「…はい」
「そうか。具合悪くなったら直ぐに保健室に行きなさい、じゃ、続けるぞ?……」
授業は再開、奏は渋々席に戻る。
時計を見るともう四時間目。
ずっと寝てたのか?
まだドキドキと心臓が脈打っていた。
以前は毎晩のように見ていた夢だったけど、最近は全然見なくなっていたのに……
疲れてんのかな?俺。
両手で顔を覆って深く息を吐く。
……何度見ても嫌な夢だ。
あの時の事は今でも忘れられない。
必死に立ちあがろとするけど、左膝が操り人形のようにダラリとなってしまって、全く力が入らず、立ち上がる事が出来なかった。
駆け寄るチームメイト。
騒然となる開場。
それでも俺は張ってでも試合を続けようとして、高田先生に抱えられて、控え室へと運ばれた。
救急車を待ってる間、俺達は負けたのだと聞かされた。
悔しくて涙が出た。
二度までも同じ事になってしまって、申し訳なさで押し潰されそうになった。
みんなの顔が見れなかった。
それから俺は一度もバスケ部に戻らなかった。
逃げたんだ。
みんなから、バスケットから…
自分自身から…
一度逃げ出したくせに、また再びバスケに戻りつつある、俺に対しての神様からの警告なのか?
お前にバスケをやる資格は無いって…

