「何時頃学校来れる?」

靴を履きながら、佐野君が聞いてきて、私はそんな佐野君を玄関先までお見送り。

「多分10時頃には来れると思う」

「そっか、じゃ、先に行ってるから」

「うん。行ってらっしゃい」

佐野君は振り向いて、私の頭を引き寄せて、額に音をたててキスをした。

何となく期待はしていたけれど、やっぱり恥ずかしい…

「行ってきます」

言うと佐野君は私の頭に一度ポンと手を置き部屋を出る。

私はまたもや窓に駆け寄り、佐野君を見送る。

もう完全に犬化してる私。

拓也君の事言えないな…
私も立派な犬だ…
拓也君がポチなら私はジョン?とか?

あ。
ジョンは雄っぽいな?
それともタマ?

……それは猫でしょ?

なんて、一人漫才みたいな事を考えていると、佐野君の姿が見えてきた。

佐野君もこちらを見上げて、ニッコリと笑う。

私の見えない尻尾は、恐らく限界を超える位に振り回しているに違いない。

尻尾は見えないけれど、代わりに左手を振って、私も佐野君に笑顔を返す。

佐野君の姿が見えなくなって、時計を見ると、7時40分。

病院が開くのは9時からだから、まだ時間に余裕がある。

佐野君が美樹ちゃんちから持ってきてくれたリュックから制服と携帯を取り出す。

昨日のお詫びを美樹ちゃんにしなくちゃ。

携帯はメールを受信していて点滅していた。

開くと美樹ちゃんからのメール。

『おはよう♪かなちゃん

昨日は突然居なくなってごめんね?

ホントは昨日カケルさんのお店に居たんだよ?私達(笑)

アスカさんがね?佐野君が店に来ても、居ないって言ってってカケルさんに頼んでたの

佐野君とかなちゃんに気を使った?みたいな?(笑)

で?

どうだった?

佐野君とはうまくいったかな?

後で聞かせてね☆

美樹』


………美樹ちゃん…

聞かせるような事は何もないよ…

…みんなして私達の事……

恥ずかしくて顔が熱くなってしまった。

でも…

ありがとう美樹ちゃん。

お陰で佐野君と幸せな時間を過ごす事が出来た。

カケルさんやアスカさんにも、また会いたいな。