「…もしもし?ああ。おはよ、てか早すぎ。…は?今から出る?今日は学校あるって言ったろ?……何時頃かって?昼から球技大会の練習するから、夕方頃かな?……は?奏だけ先に連れて帰る?ふざけんな……一人でバイクで来いだと?バカ静。そんな事言うなら奏連れてかねぇぞ?…ああ?……何だと?…このアホ静!」

何やら徐々にに険悪な雰囲気になってきているみたい。

「…あの、佐野君?私、電話代わろうか?」

「…え?ああ。…いいよ変わんなくて……は?……奏?今ここに居るけど?……うるさい!兄貴には関係ないだろ!」

段々と喧嘩腰になっていく佐野君を落ち着かせる為に、私は慌てて携帯を佐野君から取り上げた。

「静さん?おはようございます。奏です」

『あ♪おはよう。奏ちゃん、腕怪我したんだって?大丈夫?』

「はい。大丈夫です、そんなに大した怪我でもないんで、心配して下さってありがとうございます」

『そっか、よかった…で?何でそこに居るの?こんな朝早くから…』

……う。

「…それは、成り行きで…昨日私覚えてないんですけど、佐野君のバイト先で、お酒…飲んじゃって、酔っ払っちゃったみたいで帰れなくて…」

『で?茜の部屋に泊まったと?…』

「……はい…」

『あはは。別に付き合ってるならいいじゃん?まあ未成年の飲酒はあれだけど?』

付き合ってはいないけど…

「…はい。…すみません…」

『母さんが聞いたら卒倒しそうだけとね?あはは』

「……秘密にしといて下さい…」

『どうしよっかなぁ♪』

「お願いします」

『じゃあさ。お兄ちゃんお願い。って言って?』

「…お兄ちゃん、お願い」

『………いい…』

「は?」

『も一回言って!』

「はい。お兄ちゃ…」

言いかけて佐野君から携帯を取り上げられた。

「いい加減にしろっ!バカ静っ!夕方迎えに来いっ!そして死ねっ!じゃあな!」

そう叫んで佐野君は電話を切ってしまった。

迎えに来て死ねって、佐野君。
…そんな無茶苦茶な…

「奏っ。何でも兄貴の言いなりになるなよ!」

また佐野君に怒られてしまった。

何で怒ってるの?佐野君。

……涙出そう。