不意打ちのキスに暫く呆然としていると、窓の外からバイクのエンジン音が聞こえてきて、ふと我にかえり、窓の外から下を見てみると、佐野君もこちらを見ていて、私に向かって軽く手を上げた。
私は窓を開けて佐野君に手を振る。
佐野君はヘルメットの中から笑顔をみせると、アクセルを回し、バイクを走らせた。
遠退いていくバイクのエンジン音。
完全に聞こえなくなってから窓を閉めた。
一人きりになって、改めて佐野君の部屋を見回す。
少し大きめのベッドの横にはシンプルなベージュの本棚。
中には教科書と参考書と辞書と漫画本。
あの漫画知ってる、バスケットの少年漫画。
佐野君らしくて思わず口元から笑みが溢れる。
本棚から少し離れた壁際には小さめのテレビ。
テレビ台の中には綺麗に並べられた、DVDとゲーム機、その横にスチールのラックがあって、そこにはゲームとCD。
床には丸いグレーのラグが敷かれていて、真ん中にガラスのテーブル。
その上にはノートパソコン。
タンスが無いのは、すべてクローゼットの中に収まれているから。
無駄な物が一切なく、シンプルで綺麗な部屋。
私は寝ていたベッドを綺麗に整えてから、さっき佐野君が出てきたドアを開けて、バスルームへ入る。
少し狭い脱衣場の隣にはユニットバス。
服を脱ぎシャワーの蛇口を捻ると、勢いよくお湯が流れ出す。
なるべく右手を濡らさないように、頭からシャワーを浴びる。
まだ少しこめかみの痛みがあるけど、熱いシャワーのお陰で、頭の中はスッキリとしてくる。
片手でシャンプーと身体を洗うのも数回目、やりにくいけど随分と慣れてきた。
佐野君が帰ってくる前に終わらせようと、急いでシャワーを済ませる。
佐野君から借りたTシャツを着てみるけどブカブカで、シャツの長さが私の膝あたり。
さっきまで着ていたワンピースよりも長い位だった。
…コレならハーフパンツは履かなくてもいいかな?
なるべく佐野君の洋服汚さないようにしなくちゃ。
洗濯物も増えちゃうし。
なんて、普段から家事をしている私は、そんな主婦的な事をつい考えてしまう。
ドライヤーで髪を乾かして部屋に戻り、ベッドの上の目覚まし時計に目をやると、午前6時半過ぎ。

