「…私…お酒なんか飲んでないよ?」

佐野君の言った事が信じられなくて、私はそう言った。

「ホントに何も覚えてないんだな…」

佐野君は何故か少しガッカリしたように肩を落とした。

「…うん。ホントにお酒飲んじゃったの?私」

「ホントだよ…アスカちゃんのさ…」

私は生まれて初めてお酒を飲んでしまった経緯を、佐野君から聞いた。

烏龍茶と間違えちゃうなんて…
しかも酔っぱらって外に出たなんて、全然覚えてない…
私ってやっぱり間抜けだ。

美樹ちゃんも呆れてしまって、居なくなっちゃったのかな?
後で謝らなきゃ。

「あの…佐野君…迷惑かけちゃったみたいで、ごめんなさい…」

「全然迷惑なんかじゃないから、むしろ逆…あ。シャワー浴びるか?手伝ってやろうか?片手じゃ不便だろ?」

「うん。…え?…えぇっっ!」

シャワーは浴びたい、けど、手伝うって…

「ははは。冗談だよ、でも一人で入れる?頭だけでも洗ってやろうか?」

「だっ、大丈夫っ、一人で出来ますっ」

「ホントに?」

「ホントにっ!」

「じゃ、俺その間、美樹ちゃんちに行って、奏の荷物持ってくるよ」

「え?でも昨日はタクシーで…」

「バイク心配だったし、眠れなかったから…夜中に取りに行ってきたんだ」

眠れなかった?
…私がベッド使っちゃったから?
それともいびき?歯ぎしり?寝言?

ああ…急に恥ずかしくなってきた。

「…私のせいで…眠れなかったんだね…」

「いや、奏のせいじやないよ、自分自身と戦ってたの、負けそうになったけど、何とか勝つことが出来た、はは…」

「?…ゲームでもしてたの?」

「まあ。そんなとこ」

それから佐野君は洋服に着替え、タオルとかを出してくれて、

「歯ブラシの買い置きとか、ドライヤーとか、洗面台の上の棚に入ってるから、勝手にそれ使って?それからコレ、取り敢えずの着替え」

佐野君が赤いTシャツとハーフパンツを私に差し出す。

「……ありがとう…」

「バスタブにお湯はって、ゆっくり浸かっていいから。じゃ、行ってくる」

「うん。行ってらっしゃい」

「はは。行ってきます」

言うと佐野君は私の唇に軽くキスをして部屋を出ていった。