「…よいしょ…っと」

つま先で毛布ひはぐり、奏をベッドに寝かせる。

…腕の三角巾は外した方がいいな。

巾からそっと腕を出し、頭に回してそれを抜き取り、側にあったクッションの上に右手を乗せてやる。

…ふう。これでよし。

「……ん〜…」

コロンと寝返りを打つ奏。

寝返りを打った拍子に奏の太股が、白いワンピースから、下着が見えるか見えないか、ギリギリの所まで捲れ上がってしまった。

………ヤバい。

なるべくそっちに目をやらないように(無駄な)努力をしつつ、毛布を引き上げて奏にかけてやろうとしていたら、奏の両腕が俺の首に伸びてきて、グイッと引き寄せられ、倒れ込んでしまった。

「!っ…」

咄嗟に奏の顔の横に両手をつき、何とか俺が上に乗っかってしまうのを阻止出来た。

が。

俺は腕立て伏せ途中の体制で、腰まで浮かせている無茶苦茶中途半端な体勢。

腕を立てて身体を起こそうとするが、奏の力が思いの外強く、腕の怪我もあるから無理に動かす訳にもいかず、なかなか離れる事が出来ない。

おまけにお互いの頬がくっついていて、耳元には奏の寝息がかかり、まさに生き地獄。

…仕方ない…奏の力が緩んだスキに脱出しよう…


……………………………
…………………………
………………………


……1時間経過。

一向に奏の腕の中から脱出出来ない……

腕が痙攣してきて、カタカタと小刻みに震える。

額から汗が流れ落ちる。

……耐えろ。
俺の上腕二頭筋っ…

…あの空気椅子は辛かったな。
坂道ダッシュもキツかった…

…この位、昔の練習に比べたら。

だが、昔の体力に比べたら、明らかに筋力は衰えていて…

……ダメだっ。限界!

ガクッと腕の力が抜けて、奏の身体に覆い被さってしまった。

「……う〜…」

「ごめん。奏、起きた?」

「……おもい…」

「あ。ごめん…」

慌てて身体を奏の横にずらす俺。

すると奏は俺の腰に片足を乗せ、さらに密着してきた。

「…か…奏?」

呼ぶが返事はなく、俺の首筋に奏の規則正しい寝息がかかる。

……寝ぼけてたらしい…

ベッドの上で向かい合わせて、奏の抱き枕化してる俺。