いじめに立ち向かう勇気も
人をひきよせる明るさも
心から笑い合える友だちも
勉強よりも何よりも
本当に必要なものを
何一つ持っていなかった。
両親がうるさく言ったり
園川の人達に甘やかされるのは
一族の次期当主だから。
ただそれだけ。
両親が興味があるのは
僕じゃない。
きっと、そこに愛情が
あるわけじゃない。
僕がもし勉強も運動も
できなかったら?
一人息子でなかったら?
先生は?
そして
両親は?
物心ついたときから
ほんの少しの時間
遊ぶことも許されずに
まるで
機械に記憶させるみたいに
一日中勉強。
ある時小学校で
クラスの男の子たちが
話していたアニメを
僕も見てみたくて
テレビをつけた。
すると
母の平手打ちが
頬にとんできた。
『そんなものを
見ている暇があったら
勉強しなさい
“園川家の次期当主の名を
傷つけることの
ないように”』……
そんな風な扱ってきた
僕のことを
ただの僕として
見てくれるのだろうか?
