“園川 真裕”【ソノカワ マユ】
これが僕の名前。
園川家は
室町時代から続く
由緒ある名字だった。
一切が和式の
広い広い敷地の中に
園川の名字をもつ人々が
家を連ねて
何百人も住んでいる。
園川家の長男の父は
祖父が亡くなったあと
中でも
一番大きな屋敷に移り
園川家の一族の当主になった。
その
長男として生まれた僕は
小さいころから
学問を叩き込まれ
外で遊ぶ暇はなかった。
父も母も
聞いてくることといえば
テストの結果だけ。
“園川家の次期当主の名に
恥じることのないように”
“園川の名を
傷つけることのないように”
それが
両親の口癖だった。
