あたしの顔を見て、三浦悠真は自嘲気味に笑った。



「これでも俺はマトモなつもりなんだけど」



不思議な人かもしれない、とは、確かに思った。それを見抜かれてしまったのは、少しバツが悪かった。



「キミはこの学校のヒト?」



三浦悠真は右手でもう一度頬の涙を拭いて、あたしに尋ねた。



「え、あ、うん」



「そうなんだ」



そう言うと三浦悠真は足元に置いていたカバンを肩にかけて、あたしのベストポジション的手すりからすっと離れた。



「変なところ見せちゃってごめん」



「あ、ううん、全然」



意外と言うか、なんと言うか、普通に会話できてしまった。



あたしの胸はまだ締め付けられたままだったけれど。


三浦悠真は笑顔だったが、哀しみを押し込めたような、どこか無理のある微笑みだった気がした。



彼は北風に乗るように一瞬であたしの横を通りすぎ、あたしの真後ろにあるドアから校内に戻って行った。






“寒くて、苦しくて”


“哀しくて…痛くて”


“…ミサト”




あたしにはそれを振り返る勇気すらなかった。


ただ、三浦悠真の意味深なセリフと浮世離れした声は、異常なほどに強く頭に焼き付いた。