「ねぇ」


涙をぐいっと腕で拭って、あたしは三浦悠真の目の前まで近づいた。


「…なに?」





何も言えなかった。「ねぇ」以降のセリフなんて、用意していなかった。



三浦悠真は、あたしの顔を見て、クスリと笑った。



「ひどい顔」

「そっちこそ。男のクセに」



あたしがそう言い返すと、彼はまた声を出して笑った。4回目の笑い声だ。あたしもつられて笑った。



「結局、俺だけプレゼントもらった形になっちゃったなぁ」

「せっかくだし開けてみてよ」



あたしの提案で、三浦悠真は丁寧に包装された包み紙を開いた。



「おぉ、マフラーじゃん」



子供のような笑顔になった三浦悠真は、雪のように白いマフラーを手にとって太陽にかざすと、それを首に巻いてみせた。



思った通り、彼の長めの黒髪が映えて、よく似合ってる。



「“ミサト”ちゃんからじゃなくてごめんね」

「そんなことない。ホントに嬉しい。本当ありがとう」



三浦悠真の笑顔は、鮮明にあたしの大脳に焼き付いた。



もう忘れることはない。


絶対に。