魔王と秘密の契約を(仮)

自分の名前を名乗った覚えもなければ、誰かに名前を呼ばれるなんてそれ自体ありえない。


どうして、斗夜くんは私の名前を知ってるんだろう。


「それはまた後で、ね」


含みを持たせ放れたれた言葉はすごく妖艶な雰囲気を纏っていた。


担任の話が終わり、1限目までの少しの時間。

私の隣の席はあっという間にたくさんの女子に囲まれてしまった。

あれやこれやと質問を投げかける女子たちの間から見えた斗夜くんに違和感を覚える。


何か、変…。

だけど、何が変なのか分からない。

少しモヤモヤを残したまま、1限目の英語が始まる。
教科書がまだ届いてないらしく、隣の私が見せてあげることになった。


「斗夜くん、次の英文を読んで訳せるとこまで訳してもらえる?」


転校早々、運悪く当たってしまった斗夜くん。


「はい…ごめんね。」


私に一言断りを入れて教科書を持ち、席を立つ。

無表情のまま流暢な英語を読み上げる。
そして予習もしてないはずなのにその場で和訳をしてみせた。


…すごく、上手。

発音なんてとてもきれいで先生のより聞きやすい。


「……」