1年生のこの時期ってことは、前の学校に入学後まもなく転校してきたことになる。

そんなことを考えていたら。


「キャー!」


数人の女子の黄色い声。

甲高い声に顔をしかめながら前を見て、


「…っ!!」


思わず、目を逸らした。

心を落ち着けから、ゆっくりと視線を戻す。


「……っ」


今度は目を逸らさなかった。

否、逸らせなかった。

無表情で、ただ真っ直ぐと碧い目でこちらを見ている、彼。

じっと見つめるその瞳に、私は動けず見つめ返すことしかできなかった。


「斗夜、自己紹介を」

「はい」


一瞬、担任に視線を移したものの、再びこちらに視線を戻し、表情を1つ変えないまま、一言。


「斗夜玲空です」


一度も動かすことなく、あの碧い瞳を私に向けたまま。

自意識過剰のようだけど、多分間違っていない。


自己紹介というのにはあまりにも短すぎる簡潔な一言にクラスメートは何も言えないでいた。