「そうだな。私も一度に話しすぎてしまったようだ。今日はゆっくり休むといい。」
まるで、私の寝室の場所を知っているかのように奥の扉を指さした。
斗夜くんに言われるがまま、その扉を目指す。
まだ夜になったばかりのはずなのに身体は鉛のように重く、頭は中に綿でも詰められているみたいに働かなかった。
朝たった20分、早く起きただけなのにすごく長い1日を過ごした気分だった。
「もう、寝よう…」
寝て起きて、何もかも夢だったって明日の朝を迎えよう。
最後の意識はそこで手放した。
ふ、と目が覚めて、自分の部屋の天井か目に入る。
枕元の時計は午前7時を示していた。
「やば!寝坊!」
勢いよく飛び起きて、自分が制服を着ていることに気づく。
転校してきた斗夜くんから聞かされた話。
ゆっくりと昨日の記憶が戻ってくる。
「夢、なはず…」
あんな話がありえるわけがない。
とにかく、学校の用意をしなければ。
顔を洗うべく、自分の部屋を飛び出して、それ以上足が進むことはなかった。
「おはよう、小夜」
そこには、優雅にコーヒーカップを傾ける、斗夜くんの姿。
「嘘…でしょ…?」
夢じゃないの…?
「何を急いでいる?」
「学校に遅れるから支度しないと…」
「学校は休みだよ。今日は土曜日だ」
「え…?」
「お前は1日半寝ていた。木曜の夜から今まで」
「え…そんなに…?」
驚く私に近づき、額に手を当てた。
「寝過ぎてたかもしれないけど体調不良とかじゃないよ?熱もたぶんないと思うんだけど…」
「違う。お前の中にある魔力が強まっている。1日半も目覚めなかったのは魔力にお前の身体が追いついていない証拠だ。このままではもしかしたら…」
苦虫を噛み潰したような表情を一瞬浮かべ、静かに目を閉じ少しの間思案すると、斗夜は私に向き直った。
「お前を魔界に連れていく。」
