魔王と秘密の契約を(仮)


――100代目の子どもを持つ両親は自分の娘にそんな力が宿っているとも知らず、小夜と名付け、普通の家族として幸せに暮らしていたそうだ。

強力な魔力は魔族にとっては恐怖でもあり、自分の魔力を高める最高の栄養分にもなる。

当然、魔力を持った人間の子どもは魔族にとっては格好のエサになる。


そしてあの日、最悪の出来事が起こった。

小夜と、両親を乗せた車に崖の上から落石が直撃した。
事故に見せかけて小夜を喰らおうとした低級魔族の仕業だった。
運転席、助手席に乗っていた男とその妻はかろうじで顔が判別できる程度だった。

当然、その娘も同等の傷が付いているはず。
姿形がどうであれ、命さえあれば、その身を喰らい、強力な魔力が得られるだろう。

そう思い、ゆっくりと車に近づいていった。

しかし、そこで予想外の出来事が起こった。
後部座席でチャイルドシートに乗せられていた2人の愛娘には傷一つ、ついていなかった。

だが、所詮相手は人間の子ども。
低級魔族は無傷など気にしないと子どもに襲いかかり、逆にその子の魔力に飲まれてしまった。