魔王と秘密の契約を（仮）

気がついたら今のこのマンションに住まわせてくれているおじさんとおばさんと暮らしていた。
この2人と私の関係は分からない。

成長し、ある程度理解出来るようになった頃、母の遠い親戚だ、と一言告げられた。

小さかった私を引き取って、育ててくれたおじさんとおばさんには感謝すべきなのかもしれない。
けれど、その優しさの裏をひしひしと感じていたのは間違いない。

私が成長すればするほど、2人の笑みの奥にある畏怖の念は膨らんでいった。


そして、高校入学を機に1人で住むことになった。
それまで住んでいた家からかなり遠くの高校の受験を勧められたときは「やっぱりか」くらいにしか思わなかった。

このマンションもおじさんが手配したものだった。



やっぱり、私は『不要な存在』だったんだ。



「いや…何かというほどでもない。私が知っているのはお前の両親がなぜ、殺されたのかということだ。」

「殺された…？」


私を育ててくれたおじさんとおばさんからは、交通事故で2人が亡くなったと聞かされた。

それに、忘れたくても忘れられない、あの衝撃。

あれは間違いなく、事故。
殺された、なんてあるわけがない。


「それについてはまたあとで話す。先に聞いて欲しい話がある。」


そう言って斗夜くんが話し始めたのは、漫画や小説の中のような、悲しい物語だった。