「話をしよう、座って。」
そう言って斗夜くんは自分の隣を示す。
「あ、はい。」
自分の家なのに、まるで人の家にお邪魔してるかのように遠慮しながら腰をおろすと、斗夜くんが微かに笑ったような気がした。
「お前の家だ。この腰掛けも好きにするといい。」
「う、ん。あの、その話し方…」
「ん?…あぁ。素だ」
「はぁ、」
そうですか、なんて言葉すら続かず、気の抜けた相槌になってしまったのも気にしていないかのように斗夜くんはすっと真顔に戻った。
「先に一つ、聞きたいことがあるのだが」
「聞きたいこと…?」
「小夜はその、自分の父君と母君のことを覚えているか?」
「お父さんとお母さん…?」
予期せぬ質問に思わず思考が停止した。
「えっ…と、覚えてるのは微かで、これがほんとのことなのか夢なのかも分からないくらい朧げなんだけど、」
ぼんやりとした『両親』との記憶。
顔だってはっきりしていない、いつどこの記憶なのかも覚えていない。
けれど。
ふわっと私を包み込んでくれているような、あたたかい気持ちになれる。
「どうしてそんなことを聞くの?」
「あ、いや…」
「ねぇ、何か知ってるの?」
知っているのなら、教えてほしい。
