魔王と秘密の契約を(仮)


「意味、わかんない…」


そう呟く私の声も決して場違いなはずはないのに、放たれた言葉は違和感を残して辺りに漂う。

なにも言わない斗夜くん。


「人間じゃなかったらなんなの…」


小さな小さな呟きに、はっと顔を上げた斗夜くんは、その整った顔を少し歪め、横に逸らした。


「決して友好的にとれる種族ではないと思う」


そして私の目を見て一言。


「だが、私は小夜のために人間界に来た。小夜を傷つけることはしない。」


誓って、と言う。


「…私の種族は魔族。


父親が魔界を治めている魔王だ。」


言葉を一瞬、失ったかと錯覚した。


「魔王の息子…?」


自分で放った言葉にすら頭がついてけない私に、斗夜くんは「あぁ、」と頷いてみせた。


…それってご子息とかじゃないのだろうか。



というより。


「あの、信じられないんだけど…」


突然、そんな告白されても、信用なんてできない。

困惑した表情を浮かべる私を見て、斗夜くんはそうだな、と黙り込んだ。