「さっきの話だが」
ようやく、斗夜くんが口を開いた。
左に顔を向け聞こうとしたが斗夜くんは地面に視線を向けたまま、こちらを見ようとしない。
少し考えた挙げ句、私もお弁当に視線を戻し耳だけを傾けることにした。
「私が今からする話は小夜にとっては信じられない話だと思うが、」
そう前置きをして、斗夜くんは話し始める。
「まず、私のことについて話しておこう。…私は人間ではないんだ」
「……は?」
思わず口をついて出た声に間違いはないと思う。
いや…、人間じゃないって。
「私は人に非ずの者なんだ」
「……」
至極真面目な顔つきで、さも当然の如く念を押されれば、なんだかそういう気がしないでもない。
確かに、斗夜くんは普通の男子と雰囲気というか持っているオーラが確実に違う。
顔立ちだって、落ち着いた物腰だって、そこら辺の男子高校生とはどことなく、それでいて全く違っていて。
…それが斗夜くんが人間じゃないっていうことならものすごく納得がいってしまう。
……でも、さすがに。
普通、目の前にいる人が人間じゃない、と言われてすんなり聞き入れられる人はまずいないと思う。
だって、その人の姿形は間違いなく人間のそれなのだから。
