「行かないのか?昼の時間がなくなる」
「…い、い行くっ」
慌てて返事をした私がおかしかったのか、クスリと笑みを零して先に教室から出て行ってしまった。
急いで後を追うと、斗夜くんは教室を出てすぐのところで待っていてくれた。
ごめんね、と一言添えて隣に並べば、場所が分からない、と私に従った。
「……ねぇ、斗夜くん。1つ質問してもいい?」
中庭を横切りながら、目的地を目指す。
「あぁ」
「どうして斗夜くんは私のこと知ってるの?私たち、初対面だよね?」
休み時間が来るたびに聞きたかったけど、斗夜くんが毎時間女子たちに囲まれるから聞けなかった、朝からの疑問をようやく口にする。
私たち、もしかしてどこかで会ったことがあるの…?
「それはこれから話そうと思っているが、とりあえず先に結論から言うと、私はお前、小夜に会うためにここに来た」
「……え…?」
斗夜くんの話した内容にも、突然変わった斗夜くんの口調にも驚く要素がありすぎて言葉が出ない。
一人称が“私”って…。
しかもなんだかすごく訳ありそう。
それからお互い何も発することなくたどり着いた。
中庭を挟んで後者の反対側にある開けた場所は数本の桜の木が植え付けてあって、入学後間もなくしてここは私の昼食スペースになった。
今は6月に入り、桜の花も散り、若葉が生い茂って日光も遮るちょうどいい木陰を作ってくれていた。
無言で腰を下ろしたすぐ隣に斗夜くんも座る。
そして黙ったまま昼食を食べ始めること2、3分。
