魔王と秘密の契約を(仮)


「うん。私はいつも、外で食べてるの」

「外…?」

「中庭の向こうの広場の木陰でね」


場所の説明はいらなかったかな…と思いながら斗夜くんを見ると、斗夜くんも席を立った。


「一緒に、行こう」


手にはパンが入った袋。

一緒に行く、ってことはつまり、一緒にご飯を食べるってことよね?


「…いいの?」

「何が?」


戸惑いながら聞けば、ごく不思議そうに聞き返される。


「転校早々、1人でご飯食べちゃっていいの?みんなと一緒に食べないの?」


早くクラスに馴れるためにはそうするのが1番いいのに。

そう付け加えれば、斗夜くんは納得したようにあぁ…、と二度頷いた。


「別にいい」

「…え?」

「別に、いい」


初め聞き間違えかと思って聞き返すも、帰ってくるのは同じ答え。


「興味ない」

「……」


あまりにもばっさりと切った一言に何も言えず、茫然と立ち尽くす。

その言葉の通り、さも関心なさげに教室を一瞥し、こちらに目を向けた。