当初、私は彼女を同類として見、同情から友達になるが、次第にそんな彼女を生意気だと感じ始める。表向きは友達、別の友達が彼女を悪く言えば八方美人で通して、放課後、悪口を書いた紙を机やイスの裏に大量に貼り続けた。
 イジメられる側の気持ちがわかっているはずなのに、今の自分は彼女なしでは輝けない。それは、なおも続いていたイジメに対する焦りの気持ち。
━━━加代の下にだけにはなりたくない!!
 いくら友達は増えても、自分はやっぱり嫌われ者。理由もなく「見てるとムカツク」と言われたり、頼み事を断れば「中学に入ったら、リンチしてやる」、相手からぶつかってきたと思えば謝罪を求められ、何をやっても私だけ「いけないんだよ~」とケチをつけられる。笑顔に自信になくて口元に手を当てて笑えば「ブリッコ」呼ばわりされ、廊下で遭遇した雪子に「里奈ちゃんの事、好き?」と問われ、「うん」と返事をしたら足を思いっきり踏まれた事もあった。
 そんな毎日に嫌気がさして、「一緒にいてツライなら、1人の方がいい」と誰もいない図書室に避難すれば、ため息ばかりついて、その哀愁漂う後ろ姿に「バカみたい。青春してる」と、指をさして笑われる始末。
 中でも一番つらかったのは、体育の準備体操。背が低い順からペアを作っていけば、後ろから2番目の私が1人になる事は奇数でも偶数でもあり得ない。それが常に1人になるのは、五月の意思で毎度順番を変えさせられていたからだ。私はそのたびに赤白帽子の色を変え、苦手だった体操は余計嫌いになった。
 空き時間にフットベースをやる事になった時も、自分は赤組と白組どちらに行けばいいのかわからない。五月が今日は白だからと赤組に行けば、
 「お前、あっちじゃねーの?」
 じゃあ、と白組に行っても、
 「コイツって、赤になったり白になったりするからわかんねぇ」
 振り返ると、自分より嫌われ者の加代にはちゃんとした居場所もペアを組む相手もいて、それが余計に憎らしい。
 彼女の下にだけはなりたくなかった。