特に、母には「あと何年かしたら結婚して子供を産むんだし、このままじゃいけないでしょ」と強く勧められ、私が「結婚はしない。子供も産みたくない」と言ったら、子孫繁栄だの「この家を絶やす気か」と、「結婚して子供を産むのは当たり前」とまで言われた。
 結婚したくない理由はただ1つ、式を挙げたくないから。祖母の事だから、勝手に式場を手配して親戚・ご近所さんを呼ぶに決まってるし、客にジロジロ見られ、うつ状態になるのは想像出来る。いつか見たビデオの影響で妊娠は空恐ろしいし、今じゃ全く生理がなく、不妊の可能性が高い。仮に妊娠出来る体だとしても、愛を知らずして、産まれた子をどう愛せというのだろう。愛を欲しているのは私の方で、相手に与えるだけの余裕は私にはない。

 “結婚して子供を産むのは当たり前”

 母もそうやって結婚・出産したのか…
 大人になったから結婚し、老後の面倒を見てもらうために子供を産む。その子が良い子なら可愛がり、悪い子なら「いらない」と言って、跡取りのため、子供の結婚に口を出す。
 母がなぜ父を選び、私を産んだのかはわからない。父も母を愛していたのか? その愛の結晶が私なのか? それとも、いつか祖母が言っていたように、父は家が目当てで結婚し、夫婦の義務感から無理矢理セックスして生まれてきたのが、この私なのか?
 費用を気にして、「お金は別にいいのよ。あんたの幸せのためだから」と言われても、母の言う幸せと私の考える幸せは、たぶん違う。
 「あんたに稼いでもらわないといけないのに、病気を治さなきゃ働けないでしょ」……それが母の本音。

 精神科に通っていると知られたら、また「頭がおかしい」と噂されるに決まってる。それに、私だけ変われば済む話でもないだろう。
 行くだけムダなのは最初からわかっていたが、これまで「お前は心の病気だ」と具体的な病名を知る機会がなかったので、その点はとても興味があり、行くと決まってからは、むしろワクワクしていた。
 母が知人に「良い先生がいる」と紹介してもらった病院は、私の住む街から電車で30分程の所にあり、医師との相性もあるから、本当は『良い先生』なんて情報あてにならないのだが、その時は「とにかく1度、行ってみよう」という話になり、私は母と病院へ向かった。