夜、寝床について目を閉じると、暗闇に大きな目が2つ3つ浮かんで見えた。なぜか、男の目と断言出来る。私は怖くてまばたきを繰り返し、同時に耳鳴りも経験したが、祖母も全く同じ経験がある事を数年後知る事となる。
 祖母はデパート内の食堂に数十年勤め、私が7才の時に定年退職してからは、母親代わりとなって家事全般をこなしてきた。環境の変化から自律神経を患い、一時は周囲にガンと疑われるほど激やせした時期もあったが、ふっくらした今でも薬は手放せない。
 どうも私は祖母からそういった面を受け継いでいるようなのだ。
 かと言って、2人の性格までが同じというわけではなく、ナイーブな私に対し、祖母はどこか気の強い意地悪な人で、私はこの先、何度も彼女の暴言に苦しめられるのである。