だが、ドアの前で担任に呼び止められ、逃走は未遂に終わる。私は泣き顔を見られぬよう、下を向いたまま「席がわからない」とだけ告げた。本当はそんなの押し切って逃げ出したかった。体ばかりデカくて、何も言えない自分がひどく惨めで、それでもイジメは確実に心を蝕んでいく。
 小6の時、花子を通じて知り合った別の小学生の生徒も、今こうして中学で再会したにもかかわらず、懐かしむ様子もない。ほんの半年前、一緒に遊んだ事さえ忘れてしまったのだろうか?
 もはや、嫌われ者ナンバー1と化した私に、誰も近付こうとはしなかった。