ブルーローズ ~私が死んだ理由~

 私がどちらも首を横に振るから、母はまた金の事を言い出した。

 「何のために、おばぁちゃんを大事にしてたと思ってんの? お金のためでしょ? あんた、おばぁちゃんが死んで年金入らなくなったら、お母さん1人の稼ぎじゃ食べていけないよ?」

 母は、祖母が生みの親だから大事にしているわけではなかった。
 金のために生かすなら、1円のたしにもならない私は、死んでもかまわないという事か…。
 自分を薄情だと思いつつ、祖母の付き添いを断ったら、母に「だったら、ハムスターの餌買ってきてやらないからな!」と怒鳴られた。それで例の男友達に「また、ラブホテル連れて行かれるの覚悟で募集するしかないのかな?」とメールしたら、「そんな事しなくても、俺が買ってあげる」という返信を期待していたのに、「それ、俺が立候補してもいいですか?」と、H出来る事を喜ばれた。この時は母の怒りが一時的だったので、未遂に終わる。


 金を探すため、母は祖母の弟の司郎と別館をあさり、「こんなに散らかってちゃ、葬式になっても人が呼べない」と言う司郎の意見で、翌日から1週間の大掃除が始まった。家の中も外も、祖母が溜めた不要な物でいっぱい。野外調理にはまり、自分で調理場を作ったはいいが、今はただのゴミ置き場。軒下に作った薪小屋は、小屋の前が塞がって薪は取り出せないし、あれこれ置いて、自転車を出すのも一苦労。その上、2代目の調理場まである。タンスは虫食いだらけの古い衣類、それを捨てれば入るはずの洋服は、大量のダンボールに詰め、廊下や座敷を占領中。紅茶の缶、紙袋、折り箱、変色したプラスチック製品に拾ってきた家具類。この調子じゃ、私が小学生の頃に祖母がゴミ箱から回収した物も残っていそう。
 母屋はだいぶキレイになったが、別館だけは祖母の聖域なので手が出せず、ゴミ山の中での通帳探しは難航したらしい。銀行も定期貯金の収集に困った様子で、母が通帳の在処を聞いても、祖母は金を取られると警戒して答えなかったそうだ。