ブルーローズ ~私が死んだ理由~

 元の配線に戻しても、Lモードはつながらない。今の自分にはこれが唯一の希望なのに、出会い系サイトにアクセス出来なければ、もう誰にも愛される事はない。男友達とも連絡はとれない。一生、孤独のままだ。
 だから、再び使えるようになった時はホッとした反面、祖母の病気は私の作る料理が原因ではと思い、自分は父や母だけでなく祖母まで殺そうとしたのかと、己を責めた。
 母は、こんな私でも頼ろうとする。
 「無菌室で医者が4人も付いてる。いくら金がかかるか、わからない。助かればいいけど、もしダメなら金が全部ムダになる。下手したら、寝たきりや人工透析でまた金がかかるし、葬式だって金がなくて出来ないかも。お母さんはお金ないし、とりあえず、おばぁちゃんの貯金で入院費払うけど、たりなかったら可哀想だけど治療をやめてもらうしかない。働かなきゃ、治療費が払えない。あんたが側に付いててくれれば、その間、お母さんは少しでも稼げる。それとも、あんたが働く? 何かあるといけないから、もしもの時、すぐ親族に電話出来るように病院に1人置いとけって」
 金が心配なのはわかる。私も出来る事なら協力したい。…でも、出来ないのだ。
 もう、家族に触る事さえ出来なくて、母に「背中のアカをこすって」と頼まれても、ゴム手袋をする自分。まだ温もり残る脱衣所の衣類は、本人に直接触れるような錯覚に、わざわざパントングを使って洗濯機まで移動させる。祖母への恐怖は凄まじく、同じ空間にいると鼻や毛穴…体中の穴から空気1つで心まで汚染されるようで、どうしても別館に食事を届けなければならない時は、ナベつかみをしてドアノブを回し、息を止めて短時間で済ませ、「消毒、消毒」と呟きながら、潔癖症のように何度も手を洗った。
 そんな状態で側にいても何もしてやれないし、「もしもの時は電話しろ」と言われても、喋れないのに電話出来るはずがない。仕事だって簡単に見つかるものではないし、相手によってはまともに話せないのに、面接自体が無理な話だ。見舞いに来た親戚らと会うのも怖い。