璃兎は学校を出ていつものスーパーへ向かう。


一人歩く道にはいつものように人は疎らで、すれ違う人々の顔はもう覚えてしまった。

それくらい通い慣れた道である。


しかし、知らない顔がある。


―璃兎の目鼻のさきに




「あ、あの…」


困惑したように問う璃兎だが、相手は無表情で微動だにしない。


―なんで、こうなったの…?


いつものように歩いていたはず。

そう、いつものように…。

しかし、いつものように歩いていたら突然今目の前にいる青年が現れた。

ひょい、と現れた顔は知らない顔で、しかもそこらのアイドルや俳優なんかよりも綺麗な顔立ちをしている。


目線を少し下へずらせば、屈んでいてよくわからないが、スラリとした長身のようだ。

イケメンという言葉がこれほどまでに似合う青年はそうそういないだろう。


歳は見ようによっては成人していても、同じ高校生でも見れる。



しかしやはりいまいち青年の行動が読み取れない。

何故突然現れ、その上目鼻のさきに顔を近付けたのか。


「あのっ!いい加減にして下さい。私、急いでるんです。退いて」


痺れを切らした璃兎は睨みを効かせながらとうとう声を上げる。


しかし


「やっと、会えた」


青年はその言葉と睨みを無視し、今までの無表情を崩してふわりと微笑みそういった。


「え…」




「ばいばい。またね」



―うさぎ



「ちょ…」


璃兎が手を伸ばし声をかけたときには既に青年の姿はなかった。



「どういう、こと…?」



璃兎が伸ばした手は空を切り行き場を無くし、そしてその場に立ち尽くしたまま暫く動けずにいた。