母さんの身体が安定して退院したら、母さんは日本に帰った。

仕事の事情だったらしい。



「良い子にしてるのよ。」



そう言って、優しく僕にキスを落として、帰って行った。




父さんは所謂、”仕事人間”だった。


母さんが家からいなくなっても、父さんは育児をしなかった。



僕は使用人に育てられた。



僕の家は裕福で、たくさんの使用人がいたから。


たくさんの使用人が交替で僕を育てた。



「おぎゃぁぁあああ…」


僕は泣き続けた。


毎日替わる母親は、きっと安心出来なかったんだと思う。



僕はずっと待ってたんだ。

一人の母親を。


母さんのことを…