「…ぅ…う…」 堪えようと思っても、涙が溢れてくる。 あんなに冷たい純、初めて見た。 「…葵ちゃん、泣かないで。」 理人くんは、指であたしの涙を拭った。 「理人くん! 口、早く手当てしなきゃ!」 唇が腫れ上がってるし、血も垂れてる。 「これくらい平気だから。」 「いや、でも! やっぱり保健室に…」 「本当に平気。」 理人くんは笑ってる。 …ああ、そうか。 保健室に行けば、この傷を誰にやられたのか先生に尋ねられるに決まってる。 理人くん、もしかして純のこと庇ってくれてるのかな…。