下には莉奈の予想以上の人々が莉奈を一目見ようと、大勢詰めかけていた。莉奈はその数に圧倒される。

(上から見てるから、よく見える。みんなの背中に羽があるから、なんだかきれい。これから私はこの人達を守っていかなくちゃいけないんだ。)


莉奈は少し、自信をなくした。本当に自分が守れるのだろうか?この人達の命を背負っていけるだろうか?疑問だけが莉奈の頭をかき回していた。

「では、王女これをお飲みください。」


執事から渡されたのは、赤色の液体が入った小さな小瓶。


「これは?」

莉奈が執事に聞くと、


「これは、王妃が天人となるために使われたといわれる、王家秘伝のお薬です。これを一気に飲めば、それは見事な羽が生えてきます。」


「これを一気に・・・?」

「はい。一気にです。」

莉奈は飲むのをためらった。薬の色ではなく(すこしはあるが・・・。)自分が本当に人々を守りきれるか、不安が一気にこみ上げてきたのだ。

(これを飲めば、私は本当に王女になるんだ。けれど・・・。)

そんな莉奈の様子を見ていたのか、後ろにいたガイが突然莉奈の頭を撫でた。振り返ると、口だけで大丈夫だ。俺らがついてるから。と莉奈の心を知ってか知らずかガイはそんな言葉をかけてくる。莉奈は決心した。


(そうだ。私には支えてくれる人がたくさんいるんだ。だから大丈夫!)

莉奈は小瓶に口をつけ、一気に飲み干した。すると、背中が熱くなり、しびれるような感覚が莉奈を襲った。莉奈は倒れそうな体を必死に抑えていると、背中から美しい白い羽がばさっと音をたて生えてきた。


「ワーーー!!」

下から歓声が起こった。他にもいろんな声が聞こえてくる。

「きれーい!」
「ピゥーー」
「かっこいい!」
「ヒューヒューいいぞ!」

そんな中、司会が告げる。

「今ここに、リナーミ王女誕生!!!!」

「ワーーーーー!!!!!」

司会者の声で歓声がまた大きく響いた。莉奈はなんだか恥ずかしいような嬉しいような、そんなくすぐったい感じが胸の中にあった。