さよなら、片思い【完】

しばらく沈黙が続き、時計の秒針だけが部屋に響き渡る。


「…俺もタイミング悪いな。口説きにかかる前にまさか唯に見つかるとはね。誤算だったな」


最初に口を開いたのは高井くんだった。


「あのスーパーはよく行くの?」


「たまに、だけど…」


「いいよ。ここまで知られたんだ。唯にならなんでも教えてあげる。玲央のこと、気になってるでしょ?」


気にならないと言えば嘘になる。


わたしは小さく頷いた。



「玲央の母親と出会ったのはあいつが20歳で、俺が17のとき。知り合いに紹介されて、俺の方が一目惚れ。そのときあいつ、他に彼氏がいたんだ。それでも諦めきれなくて、しつこく粘って告って、奴から彼女を奪った」


それから高井くんはポツリポツリと語り出した。

高井くんが19歳のときに彼女が妊娠し、籍を入れ玲央くんが生まれた。


だが、幸せな生活も長くはなかった。


彼女は元彼が忘れきれず、玲央くんが1才になる前に我が子を置いて出て行ったのだ。


「玲央には母親はいないって言ってる。理解してるんだかしてないんだか、母親について玲央から話すことはないんだ。寂しい思いしかさせてないダメ親父だよ、俺は」


「そんなことないよ」


わたしがそう口にすると、高井くんは目を見開いた。


「だってスーパーで高井くんを探してたときレオくんに聞いたの。どんなパパなの?って」


それは人探しの上で服装や髪型の特徴を知るためで、でもレオくんは満面の笑顔でこう言った。


「パパはレオのヒーローなんだよ、って」


仕事で忙しくて構えない日も、寂しい思いもたくさんさせてるかもしれない。


でも、それ以上にレオくんは高井くんが大好きなんだ。