さよなら、片思い【完】

当然と言えば当然だけど、わたしの知らない上原くんをみんなは知っていて。


なんだかちょっぴり妬けちゃうよ。


「唯は?」


「わたし?」


「唯の小さい頃の話、聞きたい」


上原くんはわたしの方を見つめる。


あっ、この真っ直ぐな瞳、大好きだな。


「わたしの小さい頃の話なんて面白くないよ?」


クラスで人気者グループにいた訳でも、友達にモデルになるような可愛い子がいた訳でもない。


いいからいいから、と上原くんに促されてわたしは昔を思い出した。


「わたしって小さい頃は人見知りが激しくて、いつもクラスの男の子たちにからかわれて泣かされてたの」


クラスのガキ大将。いつもわたしをからかって意地悪をしてきたっけ。


「だからなっちゃんがわたしをいつも守ってくれたの。なっちゃん、クラスの男の子たちよりもすっごい強かったから」


なっちゃんがガキ大将の男の子に体当たりして吹き飛ばしたこともあったっけ。


「羨ましいな」


「えっ、なんで?」


こんなつまらないわたしの昔話のどこが羨ましいになるんだろうか。


「あぁ、俺が羨ましいのは藤堂さんに対して」


「なっちゃんに対して?」


ますますわからなくて首をかしげる。


「その頃から唯の近くにいて、唯を守って。俺がその役、やりたかった」


「それはムリじゃないかな?」


「どうして?」


「だって、上原くんと同じ小学校にいても絶対上原くんは人気者のグループだし、わたしは両極端なところにいるし」


きっと、会話どころか上原くんはわたしの存在にすら気付かなと思う。


そう考えるとこうして上原くんの隣にいること自体、奇跡的なことなんだろう。