窓側から3つ目の席、彼女はそこに座ってよく本を読んでいる。


あまりにも古いうちの大学の図書館なんて利用者数も少なくて、今日なんか彼女ひとりだけだ。


何、読んでるんだろう?と気になったけどわたしから話しかけるなんてできなくて、


いつも彼女から話しかけてくれるまでわたしは無言のまま。


「あれ?梓ちゃん?こんにちは。久しぶりだね。来てたなら声かけてくれれば良かったのに」


しばらくしてわたしの存在に気付いたのか彼女は本に向けていた目線をわたしに移した。


「久しぶりだね。唯ちゃん。…本、読んでるの邪魔しちゃ悪いと思って」


そんなことないよ、と笑いながら首を横に振った彼女はこの大学の有名人。


この大学で彼女を知らない人はいないだろう。