触れるか触れないかくらいの距離に顔を近づけて色気たっぷりの顔を見せる哲くん。


もうドキドキして心臓がおかしくなりそう!


「唯、“トリックオアトリート”ってどういう意味?」


わたしの鼓動の速さを知ってるくせになんでもないように質問をしてくる哲くん。


「えっ!?…“おっ…、お菓子をくっ、くれなきゃ、イタズラする、ぞ?”」


「正解」


色気を帯びた瞳でわたしを見つめながら大きな手でわたしの頭を撫でてくる。


「じゃあ、お菓子をくれなかった唯にはイタズラしてもいいんだよね?」


「イッ、イタズラ!?」


「そう、イタズラ。どんなイタズラしようか、唯」


楽しそうに笑う哲くんにとは対照的にイヤな予感しかしないわたし。


「あっ、あんまり辛くないイタズラだと嬉しいなぁ…」


「大丈夫。とりあえず、明日学校に遅刻しない程度に抱くから」


サラッと言ったけどとんでもないこと言ってるんだけど!?


宣言通り、哲くんの腕から解放されたのは陽が昇ったあとで、


「いやぁ、ハロウィンって楽しいね。俺、ハロウィン好きになったかも」


ハロウィンは、


カボチャランタン、コウモリ、黒猫、トンガリ帽子の魔女、


それから、甘いお菓子。


あと、彼との甘い甘い時間という項目がわたしの中でひとつ増えていったのだ。


【彼とお菓子と甘い時間】 完