さよなら、片思い【完】

「おじゃまします…」


「適当に座っててね。今作るから」


部屋に通されて辺りをキョロキョロと見渡す。


なんか、お兄の部屋の雰囲気と似ていて落ち着く。


「何か珍しいものでもあった?」


「なっ、何もないよ!それより、美味しく作ってよね!わたしお腹ぺこぺこなんだから!」


「ふふっ、腕によりをかけて作るから楽しみにしていてね」


リビングのソファーに座って手際よく作られていく料理を見て、思わず立ち上がりその側まで行ってジッと観察する。


「テレビでも観てていいよ?まだちょっと時間かかるから」


「ここでいい。…ねぇ、なんでそんなに上手く作れるの?」


我ながらバカバカしい質問だ。だけどお兄の彼女は笑わずに真剣に答えてくれた。


「経験かな?」


「経験?」


じゃあわたしが上手く作れる日なんて一生こないんじゃ…。


「でもね、経験よりも気持ちが大事。誰にどんな思いで作ってあげるかが一番重要だと思うの」


「…前にね、お兄にハンバーグを作ったことがあったの。大失敗しちゃったけど。でもお兄は全部食べてくれた。不味かったはずなのに」


「それはヒナちゃんの気持ちが料理にたくさんこもってるから、哲くんにとっては美味しい味になったんだよ」


あっ、お兄も似たようなこと言ってたな。


ヒナが作ってくれた気持ちが嬉しいって。


「ねぇ、わたしに親子丼の作り方教えて!」


作りたい。気持ちをたくさん込めて、美味しい料理を。