何度も鏡を見直してようやく納得のいく髪型が決まってリビングに向かうともうママとお兄がごはんを並べてくれていて既に食べるばっかになっていた。


「陽菜、遅いわよ。あなたもママに似て不器用なんだから。料理くらいできないと好きな人が出来ても作ってあげられないわよ?」


「うるさいなぁ。いいの!お兄は美味しいって食べてくれるもん」


「まったく。哲が陽菜を甘やかすからコレだもの」


昔一度だけお兄のために作ったハンバーグは外はまっ黒焦げ、レシピ通りに作ったソースはなぜか酸っぱくなり付け合わせの野菜は歯ごたえの良い半生、というかほぼ生のままだった。


それでもお兄は美味しいって食べてくれた。お兄は甘やかしてるんじゃなくてわたしのことが大好きなの!!!


「ヒナが俺のために作ってくれたことが嬉しかったんだよ」


「ほーら!お兄だってそう言ってるんだし!!いいじゃんか」


パパは仕事でいなかったけど、久々にママとお兄と3人で囲む食卓は賑やかで楽しかった。


ごはんを食べ終わりお兄と観ようと思ったDVDを準備しているとお兄が冷蔵庫の中から白い四角い箱を出して持ってきた。


「お兄、それなに?」


「ヒナへのお土産。さっき話したろ?」


テーブルの上に置かれた白い箱を開けると中にはわたしの大好きなガトーショコラ。