彼は引かないし、今断ったとしても
近い内に必ずまたやられるだろう。
それは2人きりの時とは限らないかもしれない。
なら。
……しょうがないので、口を開く。
するとすぐに野菜が口の中へと放り込まれた。
「美味い?」
「……美味しいよ」
作ったのは母さんだし、
味付けは僕好みにされているはずだ。
美味しいはずなのだけれど。
照れくささからなのか、
正直な所味がよく解らない。
僕が咀嚼している間に彼は自分の分を食べ
今度はその逆と、繰り返される。
……箸だから、無駄に回数が多くなる。
流石に十数回目には慣れてきて、
やっぱりいつも通りの味に、安心した。
そうして、やたらと時間のかかった晩御飯が終了した。



