「はい、あーん」

……今度はサラダだ。

彼は箸で野菜をつまんで、こちらへと向けている。


「いや、フォークあるよね?」

フォークならきっと持てるはずだ。
しかし彼は反論してくる。

「見ろよ、細かいコールスローじゃん。
 フォークだと食べにくいだろ?」

「じゃあスプーンでいいじゃん?!」

箸だともっと掴みにくくないだろうか。



「もう水に漬けちゃったし」

そうだ。
彼は僕が食べ終えるとすぐに
食器を流しへと運んでしまったんだ。



「ほら、いいから口開けろって」

「……そんなにしたいの?」

そう尋ねると、彼はさらに箸を近づけて

「一度はやってみたいだろ?」

いい笑顔でそう言った。


……まあ、確かにそうかもしれない。