「はい、あーん」

今は食事中。
彼はカレーの乗ったスプーンを、
僕の口元へと運んできた。

「いや、カレーなんだし、
 スプーンなら左でも持てるよ」

とっさに利き手をついてしまったのか、
怪我の酷いのは右手で、
左手に巻かれた包帯はまだ控えめで、
スプーンぐらいなら持つことが出来る。

なので断ると、
彼は『なんで?』という顔をした。

……だからそういう顔はしないで欲しい。
可愛いとか可愛くないとかそういう以前に
まったく似合わない。



自分でスプーンを持って食べ始めたけれど
思った以上に、苦戦を強いられる。

黙々と箸を……スプーンを進め、
ようやく食べきると、
彼は笑顔でこちらを見ていた。