「とりあえずキスだけでいいから」

そう言って彼は
僕の頬を撫でて、いい?と聞いてくる。

頷くと、ゆっくりと顔を近づけて
静かに唇がつけられた。


……最初のがトラウマになってそうだな。

あまりにも優しい仕草に
そんな事を考えると、
思わず笑いそうになってしまう。


「……なんか変だった?」

ちょっと不安そうに、彼がそう聞いてきた

「いや、何でも無いよ」

大丈夫。
そう答えると、また唇が寄せられる。


……が、


「……っ、ふはっ……っ」

彼には悪いけれど、
どうしても笑いがこみあげてきてしまう。

「どうした?」

不安そうな顔から一転、訝しげに尋ねる彼

「なんでも、ないよっ」

体を斜めに倒して腹を抱える僕を
一体何事かと見ている。



「まあ、別にいいけど、さっ!」

そう言って彼も寝転がり、
ようやく落ち着いた僕の脇腹をくすぐり
再び笑いの発作に襲われる。