「……痛い」

「ごめん!……俺も痛い」

角度を確かめ、近づいてきた唇は、
キスというには力強く、ぶつかってきた。

歯があたって、少し切れたかもしれない。






「今のは確実に失敗だよな」

「いや、初々しくていいんじゃない?」

彼は今、部屋の隅で壁に顔を向け
体育座りで頭を項垂れている。

あまりにも落ち込むものだから、
さっきまでのドキドキはどこへやら、
彼を励まさなくてはという、責任感が出る


「別にさ、そんなに気にしなくても……」

どうせ練習なのだからと、
彼の肩を叩きながら言う。

「でもさぁ……」

彼は、不満気な顔で振り向いた。

「1回目が駄目でもさ、次があるよ」

もしも即振られたとしても、
その時は僕が慰めてあげるから。

言わないけれど、傍に居るから。


……大丈夫。