「好きなんだ」

「……誰を?」

「順也の事、ずっと好きだったんだ」

そう言うと彼は僕を抱きしめて、
肩口に顔を押し付けてきた。


「困るよな……言えなかったけど、
 中学の時から好きなんだ」

くしゃっと、上着が掴まれる。

「気持ち悪いよな?
 ……あんな事したし、本当にゴメン。

 もう必要以上に近づかないし、
 キスとか絶対しないから。
 だから、さ……
 ただ、好きでいてもいい?」

迷惑はかけないから。

そう尋ねられたけれど、
彼は僕の返事も聞かないまま、
腕の力を1度強めて囁いて。

そして体を離した。


直後、さようなら と、手を振って
教室から出て行った。

……鞄を置いたまま。


僕はその別れの言葉よりも、
強く抱かれた時に言われた
『ごめん、愛してる』というその言葉に呆然として、それから……



「……アイツ、バカだ」


1人教室でそう呟いた。



……追いかけなきゃ。