「じゃ、脱がすよ?」
……どうして、こうなった?
どうやら今度は、
服を脱がす練習をしたかったらしい。
向かい合ってると自分のとは違うからと。
1つずつ丁寧にボタンを外す彼に、
どうか鼓動が伝わらないようにと祈る。
どうにか気を紛らわそうとしている内に
僕はある事に気が付いてしまった。
もっと早く、気づきたかった事に。
「あのさ、今気づいたんだけど」
「どうかした?」
「少なくとも制服だとさ、
女子とはボタンの向き違うと思うんだ」
彼は特に、向き合うとボタンの
向きが変わる事を理由に挙げていた。
だから、あまり練習にはならないんじゃ?
「じゃあ母さんの持ってくる?」
「勝手に持ち出すのはどうかと思うよ」
「だったら女物買ってくるから」
「いっそマネキンみたいなの買ったら?」
あのビニールで膨らませるやつ。
凹凸もあるし。
服を買うんならそれも一緒に買えばいい。
「それじゃあ冷たいし、嫌だ」
どんな理由だ。



