「もしもよかったら、
 私と付き合ってくれないかな?」

そう言う彼女の顔は羞恥なのか真っ赤で
僕から見ても、とても可愛いと思えた。

……こういう子なら、彼の隣に。


「やっぱり、駄目かな?」

僕よりも低い位置から、
上目使いで首を傾げる。
やっぱりこういう仕草は女の子に似合う。



……いや、こういう事を考えて
ますますトリップしている場合じゃない。

彼女は、僕の言葉を待っているんだ。


「あの、申し訳ないんだけど……」

僕、好きな人が居るんだ。

そう告白すると、彼女は瞠目し、

「そうなの?!誰?」

教えて!誰にも言わないから。と、そう言った。

何故、僕の好きな人を知りたいのだろう。


「だって、好きな人の事は
 どんな事だって知りたいと思わない?」

断られたばかりにも関わらず、
彼女はとても、綺麗に笑っている。
僕にはとても、無理な事だろうに。

「……そう、かな」

彼の好きな人が解ったら。
そしたら僕は、応援する。そう思ってた。

だけど最近、ふと思った。
キスやなんやをされてからの事だ。

これを他の誰かにするんだ。
その相手は僕じゃない。
嫉妬せずに、心から祝福できるだろうか?

……きっと、無理。

欲しいと思ってしまうだろう。
彼の隣を、あの唇を。


「少なくとも私はね!
 応援だってしてあげるわよ。
 そして隙あらば……」

「隙あらば?」

そこで彼女は不敵に笑った。

「私に惚れされるから!」

覚悟しててね。と、
これまた彼女は綺麗に笑うから。

思わず僕は、噴き出してしまう。

ひどい!と頬を膨らます彼女に、
誠意を見せなさいとアドレス交換をされ
僕は再び教室へと戻った。

先へ行ってて、と手を振る彼女は
本当はきっと辛くもあるんだろう。

その目には少しだけ涙が見えた。





それから彼女とは、
前よりたくさん、会話をするようになった