朝食後、着替えを済ませた僕は、
髪を整えてネクタイを締めようと
洗面所で支度をしていた。
「……えぐれては……」
っていうか、どこが抉れるっていうんだ?
鏡の前で横を向く。
……大丈夫なはず。
うん、大丈夫。
「確認してんの?」
一人納得していると、
拓真が室内に入ってきた。
そして、ドアと共に鍵を閉めた。
「……抉れてなんかないよ」
「そっちか!」
他に何の確認があるんだ。
そう思っていると、
彼は僕の背中にへばり付いて、
ネクタイを付ける直前の、
上まで留められた首元のボタンへと手を伸ばした。
鍵を閉められた時から、
何かを仕掛けられるとは思っていたけど
今は朝だ。登校前だ。



