あたしがそう言うと、

山本くんは、教室を出て行った。

山本くんのあとをつくように、

あたしも教室を出た。

廊下に出て、5メートル程前に

山本くんが歩いているのが見えた。

階段をきれいなリズムで下りていく。

おどり場あたりで、後ろを振り返った。

バチッと目が合って、

あたしは、急いで目をそらした。

…ドキッ

山本くんはすぐ、また前を向いた。

山本くんの目は、すごくきれいで、

思わず、心臓が飛び跳ねてしまった。

いけない、いけない。


階段を下りて、

職員室の入り口にたどり着くと、

山本くんがあたしを待っていてくれていた。

「歩くのおせーよ。」

山本くんが目を細めて、笑いながら言った。

「ごめん」

あたしも笑って返した。

「失礼します」

背筋をピンと伸ばして、

職員室に入っていく山本くん。

そのあとにあたしも続いた。


沖田先生の話を10分近く、

長々と聞いたあたしたちは、

職員室から出て、

全校生徒が登校して静かになった

廊下を2人で歩いた。

あたしと山本くんの間は

50センチくらいだった。

だけどなんだか緊張してしまって、

ドキドキしてしまった。

「高橋ってさ、元何組?」

「8組だけど・・・?」

「やっぱり!」

あたしを指差してうれしそうに微笑む山本くん。