「俺さ、地上に行きたいんだよな」
アロイスはいつもと変わらぬ口調でさりげなく呟いた。
「人間界ですか?」
一瞬驚きを隠せなかったマルスだが、平常心を装って返答をする。
気ままな兄の事だからいつか言うかも知れないと感じていても実際言われるのとは訳が違う。
「ああ。明日にでも行きたいなって」
「明日!? …明日、ですか?」
「ああ。」
アロイスはあまりにも淡々としていた。
行き方が不明などころか、実際にあるかどうかもわかないような場所だというのに。
昔、人間界に行って人間を連れて帰って来たという竜は、一時的に何処かに隠れて本来の姿に戻れなくなった者を連れて来ただけという説もある。
事実であれば明日からも皇族の日々が続く訳だが、本当であれば大変だ。
「正気ですか、兄上。国の事はどうするんですか?」
「後は皆に頼む。俺は縛りの無い世界で暮らすのが夢なんだ。俺が皇族だって知らない、そんな世界で…」
「兄上……」
彼が小さい頃からよく言っていた言葉を聞き戸惑う。
「でも、どうやって行くんですか?」
「来い」
そう言って、グレーの翼を広げ飛んで行く。
後を追いかけていくと空中に、まるで空が裂けた歪みのようなモノがあった。
「こ、これは…」
「此処に突っ込んでみる」
「大丈夫なんですか…?」
「わからない」
「え」
「ダメだったら其処でお終いだ。けど、見てみろ此処」
歪みの隙間に指を差す。
隙間には別の景色が見えた。
アロイスはいつもと変わらぬ口調でさりげなく呟いた。
「人間界ですか?」
一瞬驚きを隠せなかったマルスだが、平常心を装って返答をする。
気ままな兄の事だからいつか言うかも知れないと感じていても実際言われるのとは訳が違う。
「ああ。明日にでも行きたいなって」
「明日!? …明日、ですか?」
「ああ。」
アロイスはあまりにも淡々としていた。
行き方が不明などころか、実際にあるかどうかもわかないような場所だというのに。
昔、人間界に行って人間を連れて帰って来たという竜は、一時的に何処かに隠れて本来の姿に戻れなくなった者を連れて来ただけという説もある。
事実であれば明日からも皇族の日々が続く訳だが、本当であれば大変だ。
「正気ですか、兄上。国の事はどうするんですか?」
「後は皆に頼む。俺は縛りの無い世界で暮らすのが夢なんだ。俺が皇族だって知らない、そんな世界で…」
「兄上……」
彼が小さい頃からよく言っていた言葉を聞き戸惑う。
「でも、どうやって行くんですか?」
「来い」
そう言って、グレーの翼を広げ飛んで行く。
後を追いかけていくと空中に、まるで空が裂けた歪みのようなモノがあった。
「こ、これは…」
「此処に突っ込んでみる」
「大丈夫なんですか…?」
「わからない」
「え」
「ダメだったら其処でお終いだ。けど、見てみろ此処」
歪みの隙間に指を差す。
隙間には別の景色が見えた。
