「…ほら。大丈夫か?」
俺が連れてきたのは屋上。
全然人がいなくて、2人で話すのには最適の場所だ。
「…叫心、どうして、あたしを助けたの…?」
高橋からの思いがけない言葉に俺の心臓はチクンっと痛がる。
前ナンパから助けたときは、いつも笑顔でありがとうって言ってくれてたのに。
距離を感じてしまう。
だけど、これも全部俺のせいなのだけど。
「…ごめん。…俺、本当にかっこわりぃ…」
「え?」
俺はクシャっと髪の毛をいじる。
ほんとは、顔を隠したいだけ。男のくせに泣きそうになってるこんな情けない顔を、隠したいだけ。
「…何で、嫌がらせの事言わなかった?」
「…そ、それは…」
まさか俺が知ってるとは思っていなかったんだろうな。高橋は、驚いた様子で俺を見つめる。
「俺、そんなに頼りない?」
「違う!違うよ…!ただ、迷惑かけたくなかったの…」
「言わない方が、最低だ!!!」
不必要な高橋の気遣いに、俺は腹立たしくなってつい口調を強くしてしまう。
俺の声にびっくりした高橋を、俺は慌ててフォローしながら話す。
「…ち…違うんだ、…その…、怖かったんだ…」
「え?…」
「…本当は薄々勘づいてて…。でも、お前が離れて行くのが…嫌でしょうがなかった」
ドキドキして、言葉を上手くまとめられない。
だけど、言わないと。
今言わないと、今度はいつ言える?
俺のことだから、結局言えずじまいに終わってしまうに決まってる。
なら、今しかないだろ?
失ったものを、取り戻したい。
その一心で、俺は言葉を零した。
「お前が好きなんだ…」
…と。

